俺は、城の屋上にいた。
ここ、イングラードは、この城を頂点に扇状に広がっている。
今日のようなよく晴れ渡った日の朝には、ここから町並みを一望することを楽しみとしていた。
しかし、華やかな定期市の跡を残す町は、朝の新鮮な空気を含み、活動を始めたばかりの太陽の光に照らされつつも、なぜか色あせたもののように感じられた。
「行っちまった……」
城門を潜りってセリカ様とアベルの後姿が見えなくなったと同時に、俺はポツリと呟いた。
昨日、アベルの突然の発言に衝撃を受け、ついかっとなって彼を拒んでしまった。俺は、そのきまりの悪さから、二人を見送りに行くことが出来なかった。
本当は一緒に行きたかった。
だが、それは無理な願いだと分かっていた。
少年騎士団長という肩書きがある以上、自分がこの城を出るわけにはいかない。
それに。
姫が選んだのはアベルだ。
自分では、ない。
姫がどういう感情からあいつを選んだのかは分からない。
だが、実際に選ばれたのはアベルの方だった。
分かってはいた。
それなのに、どこかであいつを妬む気持ちがあった。
俺は、そんな自分が……許せなかった。
「だから――」
アベルたちの消えた町並みから、空へと視線を移す。
「お前に合わせる合わせる顔がなかったんだ」
ふふ、と自嘲の笑みが漏れる。
そんな俺の頬を、秋の風が優しく撫でた。
少し肌寒いが、今の自分にはこれくらいが心地良い。
(どうか無事でいて下さい、姫様。――それに、お前も)
見上げた空は、青く澄んでいた。
どこまでも、どこまでも。
オパール王国編1章終了と同時期の、主人公アベルの親友レオンの独白でした。
本編だけ見ると、なんだかいつも怒ってる系のように見えるので、
これはまずいと思い、急遽番外編としてUPする事にしました。
元々は1章のエンディングに三人称のまま組み込まれていたのですが、
あまり主人公がいない場面の描写を入れたくなかったため、話を独立させました。
セリカへの想いは恋心というより憧れ系なイメージを持っています。
実際はセリカより、親友アベルの方を強く気にかけているんじゃないかな〜…と。